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価値づくり経営の論理 [読書の杜]


価値づくり経営の論理―日本製造業の生きる道

価値づくり経営の論理―日本製造業の生きる道




私の師匠の師匠である田村正紀先生は,数年前の日本商業学会の懇親会においてこんなスピーチをされたことがあります。
「これからは学問,学会の世界でもM&Aが激しくなる」

複数の学問領域が共同で新しい知を創造する「学際」という言葉がありますが,田村先生のスピーチはこれをさらにもっと刺激的に表現されたものでした。そしてこの後,
「日本商業学会は飲み込む方か,飲み込まれる方か」
とこれまた刺激的な発言。乾杯前だったので,ほとんどの人は覚えていないのかもしれませんが,少なくとも私には記憶に残る言葉でした。

前置きが長くなりましたが,この本はまさにそれを象徴するような一冊ではないでしょうか。

著者はイノベーション研究で世界的にも著名な延岡先生。代表作である『マルチプロジェクト戦略』をみてもわかるように,もの作りに関する研究が得意分野で,組織学会という組織論や戦略論,イノベーションなどの研究家が集う学会で活躍されています。

その延岡先生が,先ほどの田村先生の言葉を借りればマーケティングの分野に「M&A」をしかけたのがこの『価値づくり経営の論理』ではないかと思います。

品質のよい商品を作りながら,一方で利益を出すことができない日本の製造業。この問題に対して,価値づくりという視点が日本の製造業には欠けている(正しくいうと失われてきた)と指摘。それを解決するための提言がなされています。

ただ,主張されていることの多くはマーケティング研究者からすると特段目新しいものではありません。おそらくマーケティング研究者が指摘するなら,日本の製造業はマーケティングがへたくそだ,という結論になるのかもしれませんし,実際に幾人かのマーケティング研究者(日本商業学会会員)からは,「こんなのマーケティングでは十年以上も前に終わった話でしょ」という批判も聞かれました。

しかし私はこの批判は2つの点で問題ありと考えます。

1つ目は,かりにそうだとして,マーケティング研究者は日本の製造業の不振に対して,どのような提言ができてきたのだろうかということ。もう1つは,なぜ同じように組織論やイノベーションの分野に,マーケティング分野が攻め込んでいかなかったのかということ。

10年前のマーケティング研究の知見でも,他の分野では新しい視点として受け入れられるのであれば,それはそれで積極的に「M&A」に乗り出すべき。市場を拡大すれば,それだけ自分たちの研究も知られることになり,それがまた新しい研究を生み出すからです。

これ以外にも,近年は戦略論やイノベーション研究からマーケティング分野への侵攻が増えてきています。このままただ批判しているだけならば,マーケティング分野は田村先生が指摘された他分野の餌食になって消えてしまうことにもなりかねません。




マルチプロジェクト戦略―ポストリーンの製品開発マネジメント

マルチプロジェクト戦略―ポストリーンの製品開発マネジメント

  • 作者: 延岡 健太郎
  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 1996/11
  • メディア: 単行本



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